あなたは
- 腹痛の原因を知りたい
- 腹痛が何か病気ではないか心配
- 腹痛に自分でできる対処法について知りたい
このようにお考えではありませんか?
腹痛があると生活が思うように送れないですし、なにかの病気なのかと心配になりますよね。
結論から言えば、腹痛が起きている場所や痛みの状況から、おおまかな原因の予測がつくことで、受診が必要な緊急性の高い腹痛なのか、自分で対処可能な腹痛なのかがわかります。
この記事では、部位ごとの腹痛の原因やそれ以外の病気の可能性について解説しており、受診が必要な緊急度の高い腹痛か、またセルフケアが可能な腹痛なのかがわかります。
具体的には、
1〜2章で「腹痛の原因」について、
3〜4章で「緊急性の高い腹痛への対応」
5〜6章で「腹痛へのセルフケア方法」
について説明します。
この記事を読んで、腹痛の原因についてざっくりと理解し、受診が必要かどうかの判断材料にしてみてください。
目次
【部位別】考えられる腹痛の原因11個
腹痛は異常が起こる内臓によって、痛みが出る位置が異なります。
1章では、おなかの上部と下部に分けて説明します。
上腹部の痛み
上腹部の痛みで考えられる、原因となる病気は以下のとおりです。
- 逆流性食道炎
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 急性虫垂炎
- 胆嚢炎
- 急性膵炎
それぞれ説明します。
逆流性食道炎
以下のような症状がみられる方は、「逆流性食道炎」の可能性があります。
■症状
- 胸焼け
- 胃液が上がってくる
- 食後の胸やみぞおちの痛み
- のどの違和感
- 声のかすれ
- 慢性的な咳
■原因
逆流性食道炎は、胃から食道に胃残物が逆流することで症状が現れます。
食道と胃の間にある、下部食道括約筋という筋肉がゆるむことで、胃の中にある胃酸や胃残物が食道に逆流してしまう症状です。
下部食道括約筋がゆるむ原因は、以下のとおりです。
- 加齢による筋力低下
- 食べ過ぎによる胃内圧の上昇
- 肥満による腹圧の上昇
逆流性食道炎は食道に炎症が起き、胃液によって食道の炎症が慢性的になると、声のかすれや慢性的な咳などの症状がみられ、不快感が生じるため生活の質が低下します。
■改善の指針
食べ過ぎを避け、食後は横にならないなど、生活習慣を改善することから始めてみましょう。
それでも改善がみられない場合は内科を受診し、適切な治療を受けましょう。
慢性胃炎
以下のような症状がみられる方は、「慢性胃炎」の可能性があります。
■症状
- 胃の痛み、不快感
- 胃もたれ、げっぷ
- 胸焼け
- 胃の膨満感
- 食欲の低下
■原因
慢性胃炎は、慢性的に胃の粘膜に炎症がつづく状態です。
原因は、ピロリ菌という細菌に感染することで炎症が起こることが多いです。
その他の要因として、日常的な暴飲暴食やストレス、鎮痛剤を長期に服用することでも胃の粘膜が弱くなり、慢性胃炎の原因となります。
■改善の指針
まずは日常的なストレスを軽減したり、おなかにやさしい食事を心がけたりするなど、胃の負担を減らすことが大切です。
それでも症状が改善しない場合は、内服による治療が必要となるため、消化器内科への受診を検討しましょう。
ピロリ菌感染がある場合は、症状が進行すると胃潰瘍や胃がんが発生する可能性があるため、適切な治療が必要です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
以下のような症状がみられる方は、「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」の可能性があります。
■症状
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振
- 胃もたれ
- 胃の張り感
- みぞおち付近の痛み
- 食後、空腹時の胃の痛み
- 黒色便
■原因
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸によって胃や十二指腸が傷つくことで症状が現れます。
胃と十二指腸は、胃酸が過剰に分泌されたり、粘膜の防御機能が低下したりすることで、消化液の胃酸と防御機能のバランスが崩れ、潰瘍が生じます。
防御機能のバランスが崩れる理由は、以下のような生活習慣の影響が大きいです。
- 日常的に感じるストレス
- アルコール
- 喫煙
- 暴飲暴食
またピロリ菌に感染したり、作用の強い痛み止めなどの薬を服用したりすることでも防御機能のバランスが崩れます。
■改善の指針
胃潰瘍、十二指腸潰瘍が重症化した場合、吐血したり胃や十二指腸に穴が開いてしまい、緊急の手術が必要になります。
重症化する前に、早めの受診を検討しましょう。
胆嚢(のう)炎
以下のような症状がみられる方は、「胆のう炎」の可能性があります。
■症状
- みぞおち・右肋骨下の痛み
- 吐き気・嘔吐
- 発熱・悪寒
- 黄疸
- 右肩周辺の痛み
■原因
胆のう炎は、胆のうに炎症が起きた状態です。
胆のうとは肝臓と十二指腸を管でつないでおり、胆汁を溜めておく役割があります。
胆のうと胆管をつなぐ、「胆のう管」に胆のう結石がつまることで炎症が起きます。
他の原因として、もともと胆管の奇形があったり、胆管の捻転、他の臓器のむくみによって胆のう管が圧迫されたりすることで生じる場合もあります。
■改善の指針
胆のう炎は自分で対処が難しく、黄疸をはじめとする上記の症状が続いて「胆のう炎かな?」と思った場合はすぐに消化器内科を受診しましょう。
症状が進行すると、炎症が悪化していき胆のうの内壁が壊死してしまい、放置することで胆のう癌のリスクが高まります。
急性虫垂炎
以下のような症状がみられる方は、「急性虫垂炎」の可能性があります。
■症状
- 上腹部・おへそ周辺の痛み
- 時間の経過で痛みが右下腹部へ移動
- 発熱
- 食欲不振
- 吐き気・嘔吐
- おならが増える
- 下痢・便が出ない
■原因
急性虫垂炎は、盲腸といわれることも多いのですが、腸の入り口である盲腸から飛び出た形をした「虫垂」という部位の炎症によって起こります。
急性虫垂炎は、摂取した食べ物に含まれる異物や糞石が虫垂内に入り、閉塞することが原因で炎症が起こります。
その他にも、虫垂がねじれたり、暴飲暴食などの生活習慣の乱れ、便秘をしたりすることでも虫垂炎を引き起こします。
■改善の指針
急性虫垂炎になった場合は、自分でできる対処法はなく、放置しても自然治癒することはありません。
炎症が進むのも早い傾向にあり、重症化すると虫垂が破裂し「腹膜炎」や「敗血症」になる可能性もあります。
以上のような症状が見られ、「虫垂炎かな?」と思われる場合は早めに病院を受診しましょう。
急性膵炎
以下のような症状がみられる方は、「急性膵炎」の可能性があります。
■症状
- 上腹部(みぞおち)の痛み
- 背中の痛み
- 嘔気・嘔吐
- 発熱
- 腹部膨満感
- 黄疸
■原因
急性膵炎は、胃の後ろにある膵臓という臓器に炎症が生じることで発症します。
膵臓は消化酵素を作り、通常は小腸の最初の部分に膵液を分泌しますが、「アルコールの過剰摂取」と「胆石」が原因で炎症が生じます。
「アルコールの過剰摂取」により、膵液の分泌が増えて膵管内圧が高まったり、アルコール分解時に発生する物質が膵臓に負担をかけたりすることで生じます。
また「胆石」の場合は、肝臓でつくられる胆汁の通り道にできた結石が移動し、膵液の出口をふさぐことによって炎症を引き起こします。
■改善の指針
上腹部から背中にかけての強い痛みに加え、上記のような症状がみられる場合はすぐに消化器内科を受診しましょう。
重症化すると意識障害やショック状態となる場合もあります。
下腹部の痛み
下腹部の痛みで考えられる、原因となる病気は以下のとおりです。
- 感染性胃腸炎
- 過敏性腸症候群
- 膀胱炎
- 尿路結石
- 大腸憩室炎
それぞれ説明します。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体による感染症で、以下のような症状が現れる可能性があります。
■症状
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
■原因
感染性胃腸炎は、各種のウイルスや細菌に汚染された食品や水を摂取することで発症します。
他にも、人やペットとの接触でも感染することがあります。
原因となる病原体は、以下が考えられます。
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- 細菌
- 寄生虫
潜伏期間は感染した病原体によっても異なりますが、1〜3日程度で上記のような症状が現れることが多いです。
■改善の指針
感染してしまった場合、嘔吐や下痢などによって脱水になってしまうため、できる限り水分を摂取することが望ましく、水分を飲めない場合は病院で点滴をしてもらうことも必要です。
それでも改善がない場合は医療機関を受診し、吐き気止めや整腸剤などの薬を服用することになるでしょう。
予防するためには、帰宅後に手洗いをしっかりし病原体を家に持ち込まないことが大切です。
また調理の際には、加熱調理が必要な食品にはしっかりと火を通し、まな板や包丁も清潔に洗浄されたものを使用しましょう。
感染した家族がいる場合は、家庭内で感染を広げてしまうこともあるため、手洗いをこまめにしっかり行い、トイレは塩素系の消毒液で消毒することが必要です。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、以下のような症状が繰り返し現れる消化管の機能性疾患です。
■症状
- 腹痛
- 腹部膨満感
- おならの増加
- 粘液便
- 便秘または下痢
- 排便後の残便感
■原因
過敏性腸症候群は、特別な胃や腸などの消化器自体の異常がなくても、上記のような症状が現れる状態です。
症状によって「下痢型」、「便秘型」、「混合型」と大きく3つの型にわかれています。
はっきりとした原因はわかっていませんが、主に自律神経の失調やストレス、不安、抑うつ、恐怖などの心理的な要因で引き起こされます。
また、腸内環境の変化によっても生じるといわれています。
■改善の指針
対処法としては、食事で刺激物や消化しにくい食品を避けたり、生活習慣の改善で規則正しい生活リズムを保ったりすることです。
過敏性腸症候群は生命にかかわる病気ではありませんが、常にトイレを気にするなど、日常生活にとって大きなストレスとなります。
症状が持続したり、悪化したりする場合は医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
膀胱炎
以下のような症状がみられる方は、「膀胱炎」の可能性があります。
■症状
- 下腹部(鼠蹊部)の痛み
- 排尿時の痛み
- 頻尿
- 残尿感
- 尿の濁り
- 血尿
- 尿意切迫感
■原因
膀胱炎は、膀胱の中に細菌が侵入することで、炎症を引き起こし発症します。
主に尿道から膀胱へ細菌が侵入することが多く、女性は男性に比べて尿道が短いことから、膀胱に細菌が入りやすく、女性の方が発症しやすい傾向にあります。
また、免疫力の低下、不衛生な環境、尿の排出が不十分な状態が続くことでも発症のリスクが高まるため、十分な水分摂取やこまめな排尿をこころがけましょう。
さらに十分な睡眠を確保したり、栄養バランスのとれた食事を心がけたりすることで免疫力を高めることも大切です。
■改善の指針
膀胱炎を発症した場合、放置することで腎盂腎炎など症状が重症化することがあるため、早めに泌尿器科や内科を受診しましょう。
主に抗生物質や抗菌薬の内服で治療することが多いです。
症状が落ち着いても再発しやすい傾向にあるため、日頃から予防策を実践し、体調管理に気をつけましょう。
尿路結石
以下のような症状がみられる方は、「尿路結石」の可能性があります。
■症状
- 突然腰背部から側腹部にかける激痛
- 下腹部への放散痛
- 腰痛
- 血尿
- 冷や汗
- 吐き気、嘔吐
- 顔面蒼白
- 排尿時の痛みや違和感
- 頻尿や残尿感
■原因
尿路結石は、尿路に結石が生じることで上記のような症状を引き起こす疾患です。
尿路とは腎臓から尿道にかけての尿が通る管を指し、結石が生じる場所によっても起きる症状が異なります。
結石ができる原因は体質遺伝と生活習慣が大きく関与しています。
尿に含まれるカルシウム、マグネシウム、尿酸などの成分が結晶化することで結石ができるのです。
水分摂取量が少なかったり、糖分や塩分の摂取量が多かったりすることで結石が生じやすくなり、濃い尿が出たり、運動不足が誘引となることもあります。
■改善の指針
上記のような症状が見られた場合、すぐに病院の受診を検討し、自力での受診が難しい場合はタクシーで通院しましょう。救急車を呼ぶ方もいます。
病院では座薬や点滴で痛みをやわらげ、結石ができた部位を調べます。
保存療法の場合は積極的に水分を摂り自然排出を促し、積極的な排出が必要な場合は結石に衝撃波を加えて砕き、尿と共に排出させ、必要に応じて内視鏡での砕石も行います。
すでに発作を経験したことがあり、座薬などの手持ちの鎮痛剤があれば内服して痛みが和らぐのを待ちます。
大腸憩室炎
以下のような症状がみられる方は、「大腸憩室炎」の可能性があります。
■症状
- 腹痛(右下腹部)
- 圧痛
- 発熱
- 下痢
- 吐き気、嘔吐
- 便秘
- 腹部の膨満感
- 血便(まれに)
■原因
大腸憩室炎とは、大腸の憩室に炎症が生じることで上記のような症状が見られます。
憩室とは、消化管壁の一部が外側に突出し袋状になった状態で、消化器全般にできますが大腸にできることが多いです。
憩室ができる原因は、高齢化や食生活の変化で便秘の頻度が増えると、腸管の内圧が高まり憩室ができやすくなります。
憩室自体は問題になりませんが、糞便が溜まったまま時間が経つことで細菌が増殖し、炎症が起こります。
症状が悪化すると、腸管穿孔(腸管に穴が開く)になったり、膿瘍を形成したりします。
■改善の指針
憩室炎による痛みがでた場合は、ご自身でお腹を温めたり、ゆっくりと深呼吸をしたり、痛みを緩和させることはできるかもしれません。
しかし、炎症による継続する痛みや、発熱などの症状がある場合は病院での治療が必要です。
病院では抗菌薬の投与をしたり、食事制限や絶食により腸管を安静にしたりする治療がなされます。
絶食をする場合は水分や栄養不足となりやすいため、入院しての点滴治療をする場合もあります。
【腹部以外の臓器】腹痛の原因5つ
腹部にある内臓以外に異常があった場合にも、腹痛を生じることがあります。
ここでは腹部の内臓以外に、以下の5つの要素で腹痛が生じる原因について解説していきます。
それぞれ説明します。
循環器疾患
心臓や大動脈など、循環器に異常があった場合にも腹痛が生じます。
原因となる疾患と症状は以下のとおりです。
腹痛を伴う循環器疾患 | 腹痛以外の症状 |
【心臓の疾患】
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【大動脈の疾患】
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■原因
これらの心疾患や血管疾患は腹痛を引き起こします。
心臓は全身の血液を循環させるポンプの働きをしており、心臓に異常が生じ、機能不全におちいると、体のいたるところの血流が滞ることになります。
消化管が詰まった場合は、消化器の機能不全が起きて腹痛や下痢などの症状がみられます。
またおなかの深部をとおる大動脈という太い血管に、乖離(内壁が剥がれる)や瘤(こぶ)の破裂などの異常が生じると、強い腹痛が起こります。
■改善の指針
心臓や血管の病気の場合、腹痛以外に胸痛や背部痛などの症状が見られることがあります。
息切れや冷や汗なども心臓や血管の異常を疑う症状であるため、その場合は早期の受診を検討しましょう。
もしくは急激な腹痛や胸痛、多量の下血などの症状があった場合は、命の危険にかかわる緊急性が高い状態であるため救急車を呼びましょう。
泌尿器疾患
泌尿器系の問題も腹痛の原因となることがあります。
泌尿器疾患による、腹痛の主な原因と症状は以下のとおりです。
腹痛を伴う泌尿器疾患 | 腹痛以外の症状 |
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■原因
泌尿器とは腎臓、尿管、膀胱、尿道で形成されており、尿を作り出し、体外に排出するための器官です。
泌尿器の役割は体内の臓器から出る、老廃物と血液中の水分をろ過して尿を作り出すことで、体の水分を一定量に保つ必要があるため、尿で排泄する必要があります。
泌尿器の位置は、腎臓は背中の下部、膀胱から先は下腹部(鼠蹊部)に位置しており、上記のような病気にかかると腹痛を伴うことがあります。
■改善の指針
対処法としては十分な水分摂取やお腹を温めることですが、根本的な治療には適切な診断と医療的な治療が必要です。
自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
日頃から十分な水分摂取と適度な運動を心がけることで泌尿器の健康を維持できます。
血液・アレルギー疾患
血液やアレルギーに関連する疾患も、腹痛の原因となることがあります。
主な原因となる疾患と症状は以下のとおりです。
腹痛を伴う泌尿器疾患 | 腹痛以外の症状 |
【血液疾患】
【アレルギー疾患】
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■原因
これらの血液疾患やアレルギー疾患は、様々なメカニズムで腹痛を引き起こします。
血液は身体の中を循環しており、血液の異常があると腹部の血流に影響を与えることで痛みが出ます。
例えば、鎌状赤血球症では赤血球の形が変形し、血管を詰まらせることで腹痛が生じます。
またアレルギーは、自分の身体を守る反応が過剰に働いている状態で、アレルギー反応が腹部の炎症や浮腫を引き起こした時に腹痛が起こることが多いです。
食物アレルギーの場合は、特定の食物を摂取した際に腹痛、吐き気、下痢などの症状が出ることがあります。
■改善の指針
上記の症状に加え、急激な腹痛や全身症状を伴うものなど、血液・アレルギー疾患が疑われる場合、自己判断せずに専門医の診察・適切な処置を受けた方がよいです。
原因を特定し、適切な医療的な処置を受けましょう。
筋肉や皮膚・骨の疾患
筋肉、皮膚、骨に関連する疾患も腹痛の原因となることがあります。
主な原因となる疾患と症状は以下のとおりです。
腹痛を伴う筋肉や皮膚・骨の疾患 | 腹痛以外の症状 |
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■原因
筋肉や皮膚・骨の疾患で、神経や組織の圧迫、炎症、または損傷によって腹痛を引き起こすことがあります。
腰椎椎間板ヘルニアでは、背骨の間にある軟骨(椎間板)が飛び出して神経を圧迫し、腰痛だけでなく腹部にも痛みが放散することがあります。
帯状疱疹の場合、ウイルスが神経に沿って皮膚に発疹を起こすと同時に、深部の痛みとして腹痛を感じることがあります。
これらの疾患による腹痛の特徴として、姿勢や動作に関連した痛み、皮膚の発疹や触覚の変化を伴う痛み、特定の部位に限局した痛みなどが挙げられます。
また、筋肉や骨の疾患の場合、腹痛以外に背部痛や運動制限を伴うことがあります。
■改善の指針
症状が持続する場合や日常生活に支障をきたす場合は、整形外科や皮膚科などの専門医の診察を受けることが重要です。
特に、激しい痛みや神経症状を伴う場合は、早急な診断と治療が必要です。
精神・神経疾患
精神や神経系の問題も腹痛の原因となることがあります。
主な原因となる疾患と症状は以下のとおりです。
腹痛を伴う精神・神経疾患 | 腹痛以外の症状 |
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■原因
精神・神経疾患は、身体的な症状として腹痛を引き起こすことがあります。
脳と腸は密接な関係があるため、精神的ストレスや不安は腸の運動や感覚に影響を与え、腹痛や消化器症状を引き起こす可能性があります。
うつ病やパニック障害では、腹痛を含む身体症状があらわれたり、腹部偏頭痛では腹部の痛みとして症状があらわれます。
また腹痛に加え、器質的な異常がないにもかかわらず、上記の症状が現れることも多いです。
■改善の指針
規則正しい生活やストレス管理によって症状が軽減する場合もあります。
しかし、腹痛をはじめとした症状が、長期間持続する場合や日常生活に支障を来す場合は、心療内科や精神科などの専門医の診察を受けましょう。
【すぐに受診が必要】腹痛の緊急度
腹痛は、種類によって緊急度が異なるため、以下のような指標で考えるとよいでしょう。
- 少し様子をみた方がよい場合
- 受診した方がよい場合
- 救急車を呼んだ方がよい場合
それぞれ説明します。
少し様子をみた方がよい場合
次のような腹痛は少し様子をみて、セルフケアをしてみましょう。
これらの腹痛は、急いで病院を受診しなくても問題が少ないかもしれません。
しかし、判断が難しい場合や体調に不安を感じる場合は、念の為医療機関を受診しましょう。
受診をした方よい場合
次のような症状を伴う腹痛は、早めの受診を検討しましょう。
激しい痛みや上記のような症状が出現したり、持続したりする場合は速やかに医療機関の受診をしましょう。
慢性腹痛は、長期間痛みが持続するため、緊急性は低いですが原因を究明するために受診をしたい症状です。
すぐに受診が必要な腹痛には、生命に関わる可能性のある重大な疾患が隠れている場合もあります。
急性虫垂炎、腸閉塞、消化管穿孔、腹部大動脈瘤破裂、胆石症、急性膵炎などが代表的な疾患です。
これらの疾患は、早期の診断と治療が非常に重要です。
救急車を呼んだ方がよい場合
次のような症状を伴う腹痛は、すぐに救急車を呼んだ方がよい症状です。
これらの症状がみられる場合は、速やかに救急車を呼んでください。
痛みに加えて、高熱、冷や汗、顔面蒼白、意識障害などの症状がある場合も、緊急性が高いと考えられます。
激しい腹痛が持続する場合や、全身状態が急速に悪化する場合は命に関わることもあるため、躊躇せずに救急外来を受診しましょう。
腹痛の受診は消化器/総合内科へ
腹痛で受診する場合、第一の受診先としては消化器内科や総合内科が好ましいです。
内科は内臓、血液、神経などの病気を診断し、総合的な診察をしてくれるからです。
内科では以下のような検査が可能です。
- 血液検査
- 腹部エコー検査
- CTスキャン
- 内視鏡検査
これらの検査から総合的に分析し、正確な診断をしてもらえます。
また、自院での対応が難しい場合は、さらに必要な検査がおこなえたり、治療が受けられたりする病院へ紹介してもらえます。
■下腹部・排尿時の痛みは泌尿器科へ
下腹部の痛みや、明らかな排尿時の痛みが強くみられる場合もあると思います。
その場合は、泌尿器科への受診も選択肢の一つにいれ、受診先の候補として検討することをおすすめします。
腹痛に自分でできるセルフケア方法5つ
腹痛の症状が軽い場合は、受診の必要がない場合も多いです。
自宅でのセルフケア方法として、5つあります。
- お腹を温める
- お腹周りをゆるめる
- 横になったり、身体を丸めたりする
- 消化によい飲み物や食べ物を摂取する
- 市販薬を服用する
これらの方法を組み合わせることで、軽度の腹痛はやわらぐことが多いでしょう。
しかし、痛みが強い場合や、これらの方法で改善が見られない場合は、無理をせず医療機関を受診することが大切です。
また、繰り返し腹痛が起こる場合も、原因究明のために医師に相談しましょう。
セルフケアはあくまで補助的な方法であり、適切な診断と治療に取って代わるものではないことを忘れないでください。
腹痛を予防するための生活習慣
腹痛を予防するためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。
規則正しい生活習慣は、腹痛の原因となる要因を軽減し、消化器系の健康を維持するのに重要な要素です。
以下に、腹痛の予防に効果的な生活習慣をあげます。
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動を定期的に行う
- 十分な睡眠と休息を取る
- ストレス管理を行う
- 適切な水分摂取を心がける
- 喫煙や過度の飲酒を避ける
これらの習慣は、腹痛の予防だけでなく全身の健康維持にも役立ちます。
継続的に実践することで、腹痛のリスクを軽減し、より健康的な生活を送ることができます。
ただし、持続的な腹痛や繰り返し起こる腹痛がある場合は、生活習慣の改善だけではなく医療機関での検査や治療も検討しましょう。
予防と早期発見・早期治療を行うことによって、効果的な健康管理につながります。
まとめ:腹痛の原因によって適切な対処を
腹痛の原因となる主な病気について、上腹部と下腹部に分けて説明しました。
腹痛の原因は、上腹部と下腹部で以下の病気の可能性が考えられます。
上腹部 | 下腹部 |
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また、腹部の臓器以外の原因は、以下のような可能性が考えられます。
- 循環器疾患
- 泌尿器疾患
- 血液・アレルギー疾患
- 筋肉や皮膚・骨の疾患
- 精神・神経疾患
■腹痛の緊急度
腹痛は、痛み方や部位はもちろんのこと、伴った症状によっても原因が異なります。
症状が軽い腹痛は、セルフケアで対処が可能な場合もあります。
しかし、以下のような症状がある場合は、医療機関での処置が必要な場合がほとんどなので、なるべく早い受診をおすすめします。
なるべく早い受診を検討 | 迷わず救急車を呼ぶ |
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おなかの臓器以外でも腹痛を引き起こす可能性はあるため、各章で紹介した症状を確認し、早期に適切な対処法を取ってください。
日頃から規則正しい生活習慣を送り、腹痛をはじめとした病気を未然に防げるように心がけましょう。